Vol.4-8 ベトナム縦断
2005/04/29-05/08

  

5月5日(木)

ベットの真上の天井に大きなファンが付いている。スイッチを入れるとブォンブォンと空気を切りながらゆっくりと回る。さらさらと風が来るようで心地良いのだが、寝ながらを見ていると、そのファンはゆらゆらと揺れながら回っている。もしどこかのネジがはずれてファンが落ちてきたら、と思うとおちおち寝ておれない。夜中に水ばかり飲む羽目になるが、結局エアコンに頼ってしまう。

今日 も快晴、朝から刺激的に暑い。でも気分は夏休みの少年のようだ。ラジオ体操に出かけるように、朝食前の散歩を。時刻はまだ朝の6時だというのに、こちらの子供達は、もう学校に行く時間のようだ。学校の近くにはフォーやパオの屋台が出て、小学生くらいの小さな生徒も、始業前に友達同士お喋りをしながら食べている。これもアジアらしい光景だ。

1時間ほど歩き、僕も朝食を取ることにした。泊まっているホテルの隣にある、小さなカフェレストラン。お客は、誰もいない、地元の人も、観光客もいない、僕だけだ。朝の7時30分、ベトナムでは遅いのだろうか。ここにもバナナパンケーキはあったが、昨日の反省もあり、無難にベトナム3大名産品の、パンと蜂蜜、そしてコーヒーを注文。やはりコーヒーは旨い。

ホーチミンに向かう列車の出発時間は、10時13分。部屋に戻り、シャワーを浴び、荷物をまとめ、チェックアウト。駅に向かうのは30分前で充分とのことで、ロビーでお茶を飲みながら待つことにする。しばらくすると日本人の青年もチェックアウト。僕と同じように列車に乗るようだが、バイタクに送ってもらわず、歩いて行ってしまった。金がないのか、そういえばドミトリー)相部屋)に泊まっていると言っていたしな。

僕はというと、もちろんバイタクで送ってもらいました。フエの駅は人で一杯だった。僕は今、出発待合室というところにいるのだが、どのように出札が行われるのか見当が付かない。しばらくすると部屋の奥のドアが開き、人々がそこに入っていく。案内があったとは思うが、もちろんベトナム語だけ、もしかすると英語での案内もあったのかもしれないが、聞き取れない。少し混雑が落ち着いたところで、そこの入り口に立っている係員に切符を見せると、中に入れとのことらしい。そこには、また同じように椅子が並んでいる待合室があった。

定刻の10時13分が過ぎても誰一人ホームには向かわない。ホームに出るドアの前には、僕が乗る列車「E1」のプレートが出ているので間違いは無いとは思うのだが。何人かの人は係員に何かを聞いているようだが、僕には聞きようがない。先ほどホテルのロビーであった青年も、ここにいるので、彼に聞いてみると、「僕も分からないが、多分 遅れているのでしょう」と。それからしばらくしてホームへのドアが開いた。

11時15分、定刻より1時間遅れでハノイからの列車はフエのホームに滑り込んできた。力のありそうなディーゼル機関車を先頭に、4等級10両編成。僕の乗る車両は、後ろから2両目の9号車、エアコン付き4ソフトベットコンパートメントの下段。これは全ての座席・寝台の中で最も高いクラスであり、フエからホーチミンまでの料金は、約600000ドン(4200円)。一番安いリクライニング式のソフトシートでも360000ドン(2500円)。鉄道で移動することは、ベトナムの物価を考えると結構高い。ちなみにフエからホーチミンまで飛行機で移動すると、飛行時間1時間10分で53ドル(5800円)、ホーチミンまで19時間掛かる鉄道を使うことが馬鹿らしく思えてくる。

さて、ベトナム統一鉄道の寝台は、4つ又は6つのベットが1つの部屋で区切られている。当然誰かと相部屋になるわけだが、楽しみでもあり不安でもある。めでたくご一緒させていただくのは、ベトナム人のご夫婦と、その子供(5歳くらい)、そしてベトナムの中年女性。 若い女性3人組というかすかな期待があったが、気まずくなった時のことを考えると、小さな子供がいることで沈んだ空気にはならないだろうと思うことにした。

フエを出発するとすぐに飛行機の機内食のような食事が配られてきた。当然質は劣りますが、まずくはない。炒め物に煮物やスープ、それとご飯。はずれの時の機内食よりも日本人には会う味のように感じた。窓側にだけ付いている小さなテーブルは当然子供と母親が使っています。その子供は「ダイ」君と言うらしく、父親が盛んに「ダイ!、○◆×△※□☆◎」なんて 叱るように話している。

列車は統一鉄道一番の難所「ハイヴァン峠」にさしかかっていた。この峠の南と北では気候がガラリと違うと言われるほど高く、海沿いから迫り立っているので、道路も鉄道もこの峠を越えなければならない。列車はキシキシと、車体とレールをきしませながらゆっくり進んでいく。車窓が見える廊下に出ると、眼下には真っ青な海が広がっていた。

僕は、その風景や、大きくカーブを曲がるたびに見える、列車の編成の写真を撮っていると、部屋のドアが開き、ダイ君が顔を出し、こちらを向いて「ホワッチュアネイム」と話しかけてきた。だけど返事を使用とすると、ダイ君は顔を引っ込めてしまう。しばらくすると、また顔を出し「ホワッチュアネイム」。今度は写真を撮ってやろうとカメラを構えると、また引っ込んでしまう。そんなことが面白いのだろう、僕はダイ君に「キャッキャッ」言いながら遊ばれていた。

ダイ君のお父さんは、痩せている人が多いベトナム人としては体格がいい。そしてノートパソコンを持っていた。彼は多分ベトナムでは優秀なエリートなのであろう。ダイ君は僕との遊びに飽きると、寝台の上段に上がり、父親と一緒にノートパソコンで「ポケットモンスター」を見出した。ベトナム語の吹き替えになっているようで、さっぱり分からない。もっとも僕は「ポケットモンスター」自体の内容も分からないが。

美人のダイ君の母親は、下段でずっと寝ている。結構僕好みだった。僕も寝台に横になると、心地よい揺れのせいで、眠りについてしまった。

気が付くとあたりはもう暗くなっている。無料で付いている夕食も、同じように質素だが美味しかった。また、途中の駅に着くと、ホームには無数の売店が並んでおり、おやつや飲み物などを手に入れることは苦労しない。夕食後のダイ君は、再び上段でビデオを見出した。今度は「ドラエモン」。これなら話が出きるぞと楽しみにしていたが、主題歌の途中でパソコンのバッテリー切れ、一緒に歌うことが出来なかったのが寂しかった。

時折明かりが見える程度の車窓、多分広大に広がる田園風景の中を進んでいるだろう列車は、少々寒いくらいのエアコンと心地よい揺れで、快適な空間を僕に与えてくれ、いつしか深い眠りについてしまっていた。

ホテルの2階にあるパソコンルーム。10分1000ドン
始業前の高校生達
小学校では朝の体操
ドアが無く開けっ放しのホテルのロビー
ハノイ行きの列車(フエ駅にて)
車内を裸で駆け回る「ダイ」君

ハイヴァン峠をゆっくり走る

機内食ならぬ車内食



<BEFORE>  <CLOSE>  <NEXT>